作業療法士を目指している方々は、作業療法士という仕事にどういったイメージをお持ちでしょうか?
日本ではまだ名前が浸透しておらず、具体的にどのような仕事をしているのか疑問に思う方もいると思います。
そこで今回は、現役作業療法士の私が、作業療法士の仕事内容やお給料に至るまでをご紹介していきます。
この記事を読んでいただければ、作業療法士のリアルを知っていただけます。
Contents
作業療法士とは?
https://www.photo-ac.com/main/detail/22400207
作業療法士は、日本ではまだ認知度が低く、具体的にどういったことをする仕事なのか知らない方が多いと思われます。
「手のリハビリをする人」「生活動作の手助けをする人」「メンタルケアをする人」
などとざっくりとした印象ではないでしょうか?
国の法律で定められている作業療法士とは、’’「身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行わせることをいう」”と定義されています。
引用:厚生労働省「理学療法士及び作業療法士法(昭和40年06月29日法律第137号)」 https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80038000&dataType=0&pageNo=1
法律で定義されている文章ではやや分かりにくいため、少し噛み砕いてご説明しますね。
作業療法士とは、身体や心に障害のある方に対して、更衣動作やトイレ動作などの日常生活動作だけでなく、余暇活動や仕事などその人の暮らしに焦点を当て、リハビリテーションを行う専門職です。
しかし、実際の現場で働いている作業療法士に「作業療法士とは?」と質問しても、完璧な答えを出せる人は多くありません。
それはなぜかと言うと、作業療法士という仕事は、一般病院だけではなく、さまざまな場所やフィールドで活躍する仕事だからです。
勤務先はさまざまで例をあげますと、脳卒中や骨折などをみる一般病院、統合失調症やうつ病などをみる精神科病院、四肢・体幹に障害のある肢体不自由児(したいふじゆうじ)や自閉症やADHDなどの発達障害をみる小児病院、その他高齢者施設などです。最近では医療機器の開発などに携わるため、一般企業に勤める作業療法士も増えてきました。
このように働く場がとても広範囲なため、作業療法士を一括りにすることができないのが実情です。
作業療法士と理学療法士の違いについて
「作業療法士と理学療法士って何が違うの?」
これはよく患者さんから聞かれる質問です。
簡単に違いを説明すると、理学療法士は基本となる身体機能に対して治療を行います。
「起き上がる」「座る」「立つ」「歩く」などの基本動作の獲得を図っていきます。
一方、作業療法士は、その獲得した基本動作を応用的動作へと繋げていく治療を行います。
理学療法により基本動作を獲得することができたら、次は作業療法でトイレまで歩いていったり、立ちながら料理をしたりなどの生活動作に近い練習を行っていきます。
ただこれらは、身体障害領域の話であり、作業療法士は身体障害だけでなく、精神障害、発達障害などの幅広い領域をみることができることが大きな違いであり特徴です。
作業療法士は、脳卒中や骨折などの身体障害だけでなく、統合失調症やうつ病などの精神障害の方の治療も行います。
身体も心もみることができるため、こうした病気にも対応できるのです。
そのため、理学療法士は主に一般病院やクリニックなどの身体障害領域で働くことが多く、作業療法士は一般病院やクリニックだけでなく精神病院や小児病院など幅広い場所で働くことが、大きな違いと言えるでしょう。
作業療法士の需要は今後どうなる?
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今現在、作業療法士はとても需要があります。
まず、現在の日本は「少子高齢化社会」です。総務省が発表した2021年の高齢化率は29.1%となっており、約3人に1人が65歳を超える高齢者なのです。
また、2065年には全人口の約25%が75歳以上の後期高齢者となり、高齢化率は38%を超えると言われています。
高齢者の人数と治療者の数が比例しておらず、現在の医療業界は常に人手不足というのが現状です。
これらのことから現在はもちろん、今後2065年までリハビリ職の需要は右肩上がり傾向にあるとされており、作業療法士もより一層必要とされるでしょう。
出典;総務省統計局「統計局ホームページ/令和3年/統計トピックスNo.129統計からみた我が国の高齢者」
https://www.stat.go.jp/data/topics/topi1291.html
さらに、作業療法士が今後も安定して需要のある職業と言われる理由がもう一つあります。
それは、「AIが発達しても無くならない職業」ということです。
2017年に株式会社野村総合研究所が発表したオックスフォード大学との共同研究によると、10〜20年後に日本の労働人口の約49%が就いている職業をAI(人工知能)に代替することが可能になるとのことです。
それと同時に、野村総合研究所は、「人工知能やロボット等による代替可能性が高い職種、低い職種」をそれぞれ100種紹介しました。
そこで紹介された代替可能性が低い職種に「作業療法士」が記載されているのです。
その理由としては、先ほども説明した「身体面も精神面も治療することができる」という点です。
身体面のリハビリは、AIが発達してくればロボットによって代用されてしまう可能性があります。
一方、精神面のリハビリは人の心を扱うので、AIでは代用することができません。
そのため、身体面に加え精神面もみることのできる作業療法士の需要が無くならないのです。
出典;野村総合研究所「日本の労働人の49%が人工知能やロボット等で代替可能に~601種の職業ごとに、コンピューター技術による代替確立を試算~」
https://www.nri.com/-/media/Corporate/jp/Files/PDF/news/newsrelease/cc/2015/151202_1.pdf
作業療法士と医療技術職の収入比較
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作業療法士は、医療技術職という枠に属します。
医療技術職には、他に理学療法士をはじめ、言語聴覚士、診療放射線技師、臨床工学技士などがあります。
ここでは、作業療法士の給料は他の医療技術職と比べて、どのくらい差があるのか紹介していきます。
作業療法士の平均収入
まずはじめに、皆さん気になっている作業療法士の給料は?
年収:419万円
月給約:29万円
出典;キャリアガーデン「医療系の職業の年収一覧と傾向【2021年最新】」
https://careergarden.jp/column/iryo_salary
理学療法士の平均収入
年収:419万円
月給:約29万円
出典;キャリアガーデン「医療系の職業の年収一覧と傾向【2021年最新】」
https://careergarden.jp/column/iryo_salary
作業療法士と理学療法士は同等と言われています。
私が働いている病院も作業療法士と理学療法士とでは差はありません。
言語聴覚士の平均収入
言語聴覚士とは、話すことや聴くこと、食べることなどに対してリハビリを行う仕事で、作業療法士や理学療法士と共に働くことが多いです。
年収:419万円
月収:29万円
出典;キャリアガーデン「医療系の職業の年収一覧と傾向【2021年最新】」
https://careergarden.jp/column/iryo_salary
作業療法士と理学療法士と同じです。
診療放射線技師の平均収入
診療放射線技師とは、放射線を用いた検査や治療を行う仕事です。
年収:549万円
月収:37万円
出典;キャリアガーデン「医療系の職業の年収一覧と傾向【2021年最新】」
https://careergarden.jp/column/iryo_salary
作業療法士や理学療法士と比べて診療放射線技師の収入は、とても高いです。
臨床放射線技師は、放射線を使用することから別手当てが付き、医療技術職では一番の高収入と言えます。
臨床検査技師の平均収入
臨床検査技師とは、心電図や脳波などを用いて検査を行う仕事です。
年収:493万円
月収:33万円
出典;キャリアガーデン「医療系の職業の年収一覧と傾向【2021年最新】」
https://careergarden.jp/column/iryo_salary
診療放射線技師ほどではありませんが、夜勤や当直の仕事があることからも作業療法士より高い収入を得ています。
作業療法士のやりがい
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作業療法士は、人の心身に対して患者さんと一緒になって治療していきます。
それは簡単なことではなく、患者さんの今後の生活がかかっており責任のあるお仕事です。
ただその分、患者さんが元気になって退院した時は、心からうれしくやりがいを感じます。
患者さんからの「ありがとう」という言葉に私はいつも救われています。
「ひとりで洋服を着ることができなかった方が、自力で洋服を着脱できるようになった」「包丁を持つことができなかった方が、料理をできるようになった」それだけでなく、「入院していた方が学校や会社に復帰した」など患者さんの生活をサポートする作業療法士はとてもやりがいを感じます。
まとめ
作業療法士は、人の心身を治療する仕事であり、とてもやりがいを感じるお仕事です。
少子高齢社会であり、医療業界は人手不足です。
そのため、作業療法士をはじめとするリハビリ職は、仕事に対して真面目に取り組むことができる人材を欲しがっています。
作業療法は、対人業務であり、人の心を見ながら治療を行います。
これは、AIでは代用することのできない仕事です。
今後さらに高齢化が進む日本において、より一層必要とされる作業療法士。
患者さんのできなかったことをできるようサポートし、一緒に喜びを分かち合う。
そんなすばらしい職業、作業療法士にあなたもぜひチャレンジしてみませんか?
鈴木 史也
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