「老年看護って一体何?」
「老年看護と成人看護の違いはあるの?」
こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
老年看護って、高齢者の身体的、心理的特徴を理解してその思いを尊重しながら高齢者自身が納得する看護を提供することがとても大切です。
Contents
老年期の特徴
老年看護について知って頂く前に老年期の身体的、心理的特徴をしっておきましょう。
老年期の身体的特徴と心理的特徴についてそれぞれ解説いたします。
老年期の身体的特徴
老年期に入ると、個々の細胞や全ての臓器で変化が起こり、身体的に様々な特徴が現れます。
それにより、機能面や外見が変化していきます。
主な特徴は以下の通りです。
こんなにも症状が出現してくるのです。
老年期の身体的特徴について、覚えておくことはとても大切です。
老年期の心理的特徴
精神機能の老化は、個人差が大きいという特徴があります。その理由は、中枢神経系が年齢を重ねて変化をしていく中で、心理的、身体的、環境的な要因が加わり、その結果として精神機能の症状が出現することだといわれています。
特に記憶に関しては、「新しいこと」を覚えることが困難になります。これは、記銘力(きめいりょく:新しいことを覚える能力)が低下するためです。
また、短期記憶の機能も低下するため、直近の出来事を思い出せない、覚えていないということもよくあります。
さらに、過去のことについては覚えているものの、思い出すのに時間がかかるようになります。
これは想起力(そうきりょく:以前の出来事を思い出す能力)が低下するためです。
これらに加え、注意力や集中力の保持をすることが難しくなります。
知的能力の面で見てみると、高齢者は計算や記銘といった単純作業や、知的作業の能力は低下するとされています。
しかし、言語的理解能力のような、経験や知識に結びつけて判断する能力は、比較的高齢まで維持されます。
老年看護の特徴
「老年看護」は高齢者の意思を尊重し、その人らしく健やかに老いることができるように援助する事を目指しています。
そのために、看護者には高齢者個々の身体・生活機能を維持しながらその人のニードを把握し、予測的に対応する事が求められます。
また、高齢者にとって家族の存在は重要であり、家族を含めて看護する視点が欠かせません。
さらに、医療はもとより、保健、福祉との調整能力が必要となります。
そして、老年看護とは、老いてゆくがゆえの衰えと、追い打ちのようにやってくるさまざまな病い、不完全な回復、いずれ訪れる死に至るまでの長い健康上の問題や、健康予防を求める人々を対象とし、一人ひとりの身体が本来的に備えている生命力を生活の場において支援する活動と言えます。
成人看護の特徴
身体的発達が安定していて、生殖能力や筋肉などがピークを迎える時期のことを言います。
この時期の身体的能力は今後の基礎体力となります。
しかし、心身ともに充実している時期である反面、労働環境、生活様式など社会的影響に左右される時期とも言えます。
この時期の健康上の問題と、今後社会的に復帰するに当たっての課題を関連付けていき、その方が可能な限り望ましい生活をする為に支援をすることが特徴になります。
成人期(せいじんき)とは、発育が完了した時期から老化が始まる時期とされます。
医学的には20歳前後から60歳前後とされる場合が多いですが、具体的な年齢や区分は、社会的背景や研究者などによって異なります。
身体的に生命の危機状態にある人、生涯にわたり疾患コントロールが必要な人、終末期において症状の苦痛緩和が必要な人など健康状態は様々です。
成人看護では、成人期にある対象のライフサイクルや、健康状態レベルに合わせて必要な看護を提供できるようになることを目標としています。
成人期は人生の中でも一番長期で、成長・成熟・衰退の過程をたどる時期です。
自立した社会的存在である成人では、生活習慣、発達段階の達成や加齢に伴い、健康に関しての課題は多様で、その健康問題が社会生活へ及ぼす影響は大きいと言わざるを得ません。
成人期の特徴と健康を害することによるライフサイクルに及ぼす影響や生活の場に生じる問題を理解し、健康の保持・増進、疾病の予防・健康レベルの回復に関わる看護と言えます。
老年看護と成人看護の違い
「老年看護」を一言でお伝えすると・・・
《高齢者の意思を尊重し、最期まで、人らしく過ごせる事を支援する事》だと言う事です。
「成人看護」を一言でお伝えすると・・・
《さまざまな健康問題を予防し、より健やかに生活していくことができるように支援していく事》です。
疾患や問題に焦点を当てた、医学モデルの視点ではなく、高齢者を一人の人としてとらえて、ケアを提供する方法を実践して行く事が重要になるのです。
それには、他職種(医師、介護士、栄養士、保健師、PT、OT、ST、介護支援専門員等々)と共に、高齢者個人だけでなく、家族(介護者)が納得のいく終末期を送れる様に、支援していく事が「老年看護」の特徴なのです。
「成人看護」は、青壮年層を対象としているので、家族、職場又は地域社会で、中核的な役割を担い、社会的、経済的に要となる方達が対象です。
成人期にある、様々な健康障害を持った人や家族を対象に、疾病や外傷及び、手術等により、高度な侵襲を受けて、急性期にある人、リハビリテーションが必要な人、更に慢性疾患によって長期コントロールが必要な人を看護するのが特徴です。
日本では、長い間、老人看護は成人看護の中に位置づけられていました。しかし、長期化した老年期の健康は一日にしてなるものではなく、成人期の生活の延長上にあるのです。
そこで、老年期、成人期の対象を分けて、上記特徴を理解した上で各々の看護が必要になるのです。
老年看護の役割
高齢社会において、「老年看護」に携わる看護師に求められる役割は大きいです。
緩和ケアを含めた、高齢者の心身の機能を踏まえた、医療の在り方を考え、実践していく必要があります。
その為にも、他職種とチームで取り組み、高齢者にふさわしい看護の提供を、実現化していく必要があります。
そして、患者様のニーズに答えられる看護の提供、来たるべき日本の、超高齢社会への準備と提言を行っていくべきなのです。
老年看護の魅力
「一人ひとりの生命、生活、生涯の流れを時間をかけてアセスメントできること」
アセスメントのプロセスでは、その人なりの人生の物語に触れられ、その人固有の思いに添って生と死に対する人間としての敬意を新たに分かっていく機会が多いことです。
他職種からの期待
老人の身体リズムやバランスの不調や身体症状(発熱、痛み、浮腫、かゆみ、不眠、脱水、嘔吐など)を、疾患との関係からアセスメントする責任や、問題の所在を推理・推論する役割を利用者や他職種から期待されます。
他職種との連携
他職種と連携をしなければ、アセスメントそれ自体が機能しません。
すなわち、対象者様に関係する全ての職種が何らかのアセスメント力を有しているので、チームづくりを怠るとより良い看護の方向性を共有できなくなるということになります。
傾聴
看護師は他職種のさまざまな考えに耳を傾けて出来事の意味を見出す機会を常に用意しなければなりません。
それによって、自分のすべき役割に気づく機会も多くなり、迅速かつ柔軟に対応することができる機会や役割が広がっていきます。
まとめ
「老年看護」は、最期の時まで寄り添うことができます。
一人の力では出来ないことも、みんなで支えあうことで、専門性を活かした、やりがいのある看護を現場から確立し、高齢者が最期まで、その人なりの生活を送って頂けるのです。
「成人看護」は、自立した社会的存在に当たる成人の看護のことを言います。
生活習慣、社会的地位(労働環境)や加齢に伴い、健康に関しての課題は多様で、
その健康問題が社会生活へ及ぼす影響はとても大きいのです。
健康の保持、増進、疾病の予防、健康レベルの回復に関わる看護なのです。
本間弘子
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①脳:細胞が減少して、物忘れや新しい事を覚えにくくなる
②目:遠視や視力低下が起こり、乾燥しやすくなる
③口:唾液の分泌量が低下して、口中が乾きやすくなり、歯周病になりやすくなる。又、食べ物が飲み込みにくくなり、ムセたり、つかえたりする
④内分泌:女性ホルモン➡男性ホルモン➡甲状腺ホルモンの順番に、分泌量や機能が低下する
⑤骨:骨量が減り骨折しやすくなる
⑥関節:靭帯や腱が硬くなる。関節軟骨も硬くなるので、関節が動かしにくくなる
⑦筋肉:筋線維が弱く、細くなるので、筋肉量が低下する。
腕より、足の筋肉の方が衰えやすい
⑧耳:高音域が聞き取りにくくなり、耳が遠くなる
⑨皮膚:乾燥しやすくなり、弾力が低下する。感覚が鈍くなる
⑩呼吸器:肺活量が低下するので、動きに伴い息切れが生じる事がある
⑪循環器(心臓、血管):血管が硬くなり、動脈硬化が起こりやすくなる。
心臓が弱くなり、動悸が起こりやすくなる
⑫消火器:胃腸の分泌量が低下するので、消化力が低下する。
腸の動きが悪くなるので、便秘傾向になる。
⑬泌尿器:膀胱が委縮するので、許容量が減り、トイレが近くなる。
尿道括約筋が低下するので、失禁する事もある