ここ数年で高齢者施設がたくさん出来てきていますが、特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いをご存知ですか?特別養護老人ホームに入るための条件や違い、また入所費用など、施設を利用する上で気になりますよね。
それらの違いを詳しく解説しましたので、施設選びで迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
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特別養護老人ホームとは?
引用:https://www.photo-ac.com/
特別養護老人ホームとは、通常の生活が一人では難しくなった高齢者を対象とした施設です。
介護を必要とする方のために、「終の棲家(ついのすみか)」となる生活の場と、24時間の介護サービスを目的とした施設です。認知症の方の受け入れも可能となっています。
特別養護老人ホームは主に、在宅での生活が困難になった要介護の高齢者が入居できる公的な介護保険施設の1つで、「特養」と呼ばれることが多いです。
民間運営の有料老人ホームに比べて低料金であることが魅力ですが、要介護3以上の方しか入居出来ないなど、条件が厳しく設定されています。
また、特養は介護度の高い利用者が多いため、看取りとして利用される需要も高くなっています。
施設で働く職員は、高齢者が最期をどこで迎えるか、希望の場所で看取りを行うためにはどうしたら良いかなど検討しており、特養の6割以上が看取りを実施しています。
特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いは?
引用:https://www.photo-ac.com/
特別養護老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体が運営する施設です。
入居の対象者は65歳以上、要介護3〜5の認定を受け、常に介護が必要な状態で自宅での介護が困難な方、寝たきりや認知症などの比較的重度の方、緊急性の高い方が入居の優先となります。
一方「有料老人ホーム」は、主に民間の企業によって運営されており、介護付き、住宅型、健康型の3つのタイプに分けられています。
入居の対象となる方は施設によって違いますが、65歳以上で自立の方(自立して身の回りの事を自分でできる方)から可能です。
特別養護老人ホーム | 有料老人ホーム (介護付き・住宅型・健康型) |
|
運営主体 | 地方公共団体・社会福祉法人 | 主に民間企業 |
目的 | 介護をするための施設 | 介護や食事のサービスを受けながら生活をする施設 |
入居対象 | 65歳以上の要介護3以上の方 | 65歳以上の方で、自立の方から要支援・要介護の方まで可能 |
空室状況 | 寝たきりなどの重度の人や、緊急性の高い人から入居となるため、入居までに、数カ月から10年近くかかる場合もあり、入居待機者が約40万人いる | 65歳以上の方で、自立の方から要支援・要介護の方まで可能。空いていればすぐに入居可能 |
費用の目安 | 月額5万〜15万円 | 月額15〜20万円 |
建物・居室 | 築年数が長いホームが多く、相部屋が多い | 新築のホームが多く、基本的には個室 |
医療ケア | 医療サービスは限定されており、夜間の医療対応や常時医療対応が必要な方は対応が難しい | 最近では24時間看護職員の配置や、クリニック併設のホームもあり、サービスの種類が豊富 |
特別養護老人ホームの特徴
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特養は基本的に要介護3以上(特例の場合要介護1・2)の高齢者が入居し、終身の介護を受けることができます。
公的な施設なので、民間で運営されている有料老人ホームより費用が安く、経済的に余裕がない方でも入居しやすいのが特徴です。
しかし安いがゆえに人気が高く、近年、入居要件が厳格になっているので、入居のハードルが高いことが課題となっています。
なお特養には主に3つの形態があります。
1,広域型特別養護老人ホーム
広域型特別養護老人ホームは、最も一般的な特養の形態で、定員は30名以上です。どこの居住地域に関わらず、申し込むことができます。
そのため、都市部の方が地方の施設に申し込むことも可能です。そのため、特養は入居待機が多いですが、広域型であれば場所にこだわらなければ、比較的早く入居できる可能性が高いです。
2,地域密着型特別養護老人ホーム
地域密着型特別養護老人ホームは、定員29名以下の地域に根ざした小規模な特養です。基本的にその地域に住んでいる方でないと入居することができません。
地域密着型には「サテライト型」と「単独型」と呼ばれる2つの形態があります。
3,地域サポート型特別養護老人ホーム
地域サポート型特別養護老人ホームは、在宅で生活している高齢者に対して、サービスを提供する特養です。24時間365日の見守り体制を構築し、在宅介護生活を送る高齢者をサポートします。
この地域サポート型特養を利用できるのは、要介護認定を受けていて、生活に不安のある方、介護認定は受けていないが見守りを必要とする65歳以上の方などが対象となります。
有料老人ホームの特徴
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有料老人ホームには、目的や介護サービスの提供方法、入居対象等により大きく分けて4種類の形態があります。
1、介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは、主に介護を必要とする高齢者が介護や生活支援を受けて、居住する施設となります。
食事・洗濯・清掃などの生活支援、排泄や入浴などの身体介護、機能訓練、レクリエーション、サークル活動などのサービスを受けることができます。
2、住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは、食事、洗濯、清掃等の生活支援サービスが付いた高齢者施設となります。
入居者が要介護となった場合は、介護サービスを受けるため、ホームとは別に訪問介護などの在宅サービス事業所と契約する必要があります。
ホームのスタッフが介護サービスを提供する事はありません。介護保険料の自己負担は在宅サービスと同じ扱いで支払うため、介護度が高くなると、介護付有料老人ホームより介護サービス費が高くなる傾向があります。
3、健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームとは、家事サポートや食事等のサービスが付いた高齢者施設です。身の回りのことは自分でこなせる、自立した状態の高齢者が対象となり、元気な状態をなるべく維持することを目的とした設備が充実しています。
要介護となった場合は、契約を解除し退去することになりますが、介護が必要になった場合には移動できる施設が隣接しているところもあります。
4、サービス付き高齢者向け住宅
有料老人ホームに似たような施設で、一般的に「サ高住」と言われています。
サービス付き高齢者向け住宅とは、主に自立した軽介護度の高齢者を受け入れている賃貸住宅です。
本来は高齢者の居住安定確保を目的とした住宅ですが、介護サービスを提供しているところもあり、有料老人ホームとの違いが曖昧となっています。
特別養護老人ホームの費用は?
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特別養護老人ホームにかかる利用料について下図にまとめました。
特養の場合、入居一時金等の初期費用は不要で、支払うのは毎月の利用料のみです。(所得が低い場合でも比較的容易に利用できるので、人気が高いです)
施設介護サービス費の料金表
特養で受ける介護サービスに対してかかる費用です。金額は要介護ごとに比例して高くなります。またどんな居室かによって金額は変動します。
要介護度 | 多床室・従来型個室 | 従来型個室・ユニット型個室 |
要介護1 | 1万7,190円 | 1万9,560円 |
要介護2 | 1万9,230円 | 2万1,600円 |
要介護3 | 2万1,360円 | 2万3790円 |
要介護4 | 2万3,400円 | 2万5,860円 |
要介護5 | 2万5,410円 | 2万7,870円 |
※特養の入居条件の特例として要介護1・2が認められるケースもあります。
介護サービス加算の料金表
介護サービス加算は人員体制やサービスの充実に応じて請求される追加の施設介護サービス費を示します。充実したサービスや充実した環境で受けるほど、この加算は多くなります。
加算内容 | 内容 |
初期加算 | 入所30日前後まで加算 |
サービス提供体制強化加算 | 介護福祉士の配置割合・勤続年数に関する加算 |
看護体制加算 | 看護師の人数・体制に関する加算 |
介護職員処遇改善加算 | 介護職員の処遇改善を目的にした加算 |
外泊時費用 | 1ヶ月に6日を限度とした外泊時の加算 |
その他に居住費(家賃のようなもの)・食費・日常生活費(理美容代や医療費・嗜好品の購入代金など)が必要となってきます。
例外として、おむつや尿取りパットに係るおむつ代、クリーニングが不要。洗濯にかかる代金については利用者ではなく施設側の負担になります。
有料老人ホームの相場の費用は?
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有料老人ホームに入居する場合、「入居一時金」が必要となります。「入居一時金」とは一定期間分の家賃を入居時に一括で支払うお金のことです。
入居一時金は、平均余命などを参考に、一定の入居者が住み続けるであろう「想定居住期間」を設定し、その期間の賃料や介護費などを前払いする仕組みとなっています。
以下の表で、有料老人ホームに分類される3つの施設の相場を示しましたので、参考にして下さい。
施設種別 | 費用相場 |
介護付き有料老人ホーム | 30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 6万円 |
健康型有料老人ホーム | 0〜1億円 |
※健康型有料老人ホームは施設によって費用差があるため、概算した金額を記載しています。
特別養護老人ホームの入所条件
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特別養護老人ホームの入居条件は、大きく分けて
- 要介護3以上で65歳以上の高齢者
- 特定疾患が認められた要介護3以上の40から64歳以上の人
の2つあります。詳しくは下記に詳細を書いていますので、参考にして下さい。
1,要介護3以上で65歳以上の高齢者の入居条件
- 65歳以上
- 要介護3以上に認定されている
両方の入居条件を満たしている方は入居できますが、どちらか一方だけを満たしている方は、入居できません。
原則として在宅での介護が難しい方を受け入れ対象としています。例えば身寄りのない方や、家族間での介護が困難な場合が該当します。
しかし、入居条件を全て満たしていても、入居を断られる場合もあります。例えば、24時間体制で手厚い医療ケアが必要な人が代表的です。
なぜなら、特養は医師や看護師が常駐しているとは限らないからです。
2,特定疾患が認められた要介護3以上の40から64歳以上の人の入居条件
- 40歳から64歳の方
- 要介護度3以上で特定疾病が認められている方
特定疾病は高齢者に多い疾患ですが、若い方でも発症する疾患で、全部で16の病気が特定疾病に指定されています。
40歳以上で特定疾病を発症した場合は、65歳に満たなくても介護保険が適用され、発症後は要支援要介護状態に移行しやすく、自立した日常生活が困難になりやすいです。
「16の特定疾病」は下記を参照して下さい。
- がん(医師が医学的知見に基づき、回復見込みがない状態と判断したものに限る)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
有料老人ホームの入所条件
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入居条件は、事業者や施設の各タイプによって違います。有料老人ホームの多くは民間運営のため、各施設の入居条件には少し差があります。
そのため、有料老人ホームへの入居を希望している場合は、対象施設の入居条件をしっかり確認することが大切です。有料老人ホームの各3タイプの入居条件は以下の通りです。
1,介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームの利用対象者は、軽度〜重度の要介護者です。
利用対象者の幅が軽度〜重度の要介護者と範囲が広く、現在は軽度でも、将来的に重度の要介護者になりうる方の利用も多々あります。
この場合、夫婦で利用される方が多く、一人が自立して生活し、もう一人が重度の要介護者として、サポートを受けながら一緒に生活を共にする夫婦も少なくはありません。
2,住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームは、事業者や施設によって入居条件が大きく違います。一般的には65歳以上の方が対象となっていますが、中には60歳未満で入居できる施設もあります。
自立・要支援・要介護の条件も様々です。自立の方のみが利用できる施設もあれば、要支援〜重度の要介護者を受け入れる施設もあります。
基準が一律ではないため、必ず入居条件を確認しましょう。ただし、重度の認知症の方や、24時間の介護が必要な方、または高度な医療ケアが必要な方は、入居が難しいケースが多くなっています。
3,健康型有料老人ホーム
基本的には、健康で自立している方しか利用することができません。ただし中には、要支援や軽度の認知症であれば利用できる施設もあります。
施設によっては、独自の入居条件を設けているところもあります。たとえば身元引受人がいない方や、感染症を患っている方は入居できないケースもあります。
まとめ
ここまで、特別養護老人ホームと有料老人ホームの違いや入居条件についてお伝えしてきました。
老人ホームと一言で言っても、多種多様な形態があり、初めて利用を検討される方には、その違いがなかなかわからないですよね。特別養護老人ホームと有料老人ホームでは、同じ老人ホームでも価格もサービスも利用者層も変わってきます。
持病の有無や経済状況などに照らし合わせて、あなたにとって最適なサービスが利用できますことをお祈りしています。
yamano
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